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冒頭30分退屈だが「居眠り磐音」 [映画・文学・音楽]

 カッコつけで全国の学校に対して休め!と後先考えずに言ってしまったため、文科省が慌てて地方の実情を踏まえてと追加記者会見。そして、出ました!びっくりポンの「有給休暇」発言。有給休暇と休業補償の区別もついていないのか、そもそも(←「閣議決定」された「そもそも」ではなく正しい使い方ですゾ)有給休暇の意味がわかっていないのか、さすがデンデンの安倍ちゃまですなぁ。
https://news.livedoor.com/article/detail/17888100/

「居眠り磐音」☆☆☆★

 佐伯泰英作の時代小説で、NHKでドラマ化(主演・山本耕史)されたようだが、例によって情弱の私は、原作もドラマも全く知らなかった。
 その映画化。
 監督は本木克英。確か「GONIN」の監督だったと思うのだが、この映画は見ていない。主演の坂崎磐音に松坂桃李、彼が住んでいる長屋の大家(中村梅雀)の娘おこんに木村文乃。その他、佐々木蔵之介、石丸謙二郎、西村まさ彦、谷原章介、柄本明、芳根京子、中村ゆり、財前直見など、それなりの役者を揃えてはいる。時代劇に刀もきちんと構えられないアイドルなど不要なのでこれでいいと思うのだが、一般には全体にやや地味な配役と受け取られるかもしれない。

 磐音は住んでいた藩のごたごたで上意とはいえ親友を斬り、許嫁とも別れ、江戸の長屋でひっそりと暮らしている。ところが生活費を稼ぐため雇われた両替屋・今津屋の用心棒になったことから大きな陰謀の渦に巻き込まれていくというもの。藩で御家騒動などいろいろあって藩を離れ江戸で用心棒にという段取りは理由付けとしてよくある話で藤沢周平の「用心棒日々抄」(これもNHKで「腕に覚えあり」としてドラマ化された)などとほとんど同じだ。

 となると、求められるのは主人公のキャラクターで、松坂の時代劇???と思ったが、意外にもこれが実に素晴らしい立ち回りでちょっと驚いた。今津屋に用心棒になりに来たときの強請浪人とのやりとりなど斬り合いはスピードと反射神経が勝負を分けることをよく表していて感心した(開始50分くらいのところ)。役者というものは文字通り(いろいろな)役を演じる者なのだが、それにしてもデビューの戦隊ヒーロー物(「侍戦隊シンケンジャー」)、探偵(「視覚探偵 日暮旅人」)、性を売る男(「娼年」)、多くの俳優が逃げた権力批判の映画(「新聞記者」)そして、本作の陰のある浪人などチャレンジ精神は誉めていい。

 木村文乃は刑事物を見ても恋愛物を見てもコメディを見てもイマイチだったが、今回のおこん役は江戸っ子娘の感じがよく出ていて悪くない。朝ドラ「べっぴんさん」主演のときはべっぴんに見えなかった芳根京子がべっぴんに見えたのも驚き。女は、化けるなぁ(^^;。中村梅雀、佐々木蔵之介などは毎度の安定感なので安心して見ていられる。
 ただ、敵役が柄本明の怪演はあるものの圧倒的に弱い。黒澤明の「用心棒」「椿三十郎」は敵役に仲代達矢を配したからこそおもしろくなったのだ。有名でも無名でもいいが、もしかすると松坂が斬られちゃうんじゃないかと思わせる(まあ、このての話で斬られるようなことは絶対にないが)くらいの存在感が敵役にないと話はおもしろくならない。柄本が放つ刺客にはせめて伊原剛志か山田孝之、江口洋介あたりをもってきてくれないと物語に厚みが出ない。

 あと、気になったのはやはり全体の構成だ。
 藩士だった磐音が江戸で浪人暮らしをしていることには理由付けがいるわけだが、2時間の映画のうち30分以上かけるのは、はっきり言って長すぎる。もちろん剣の達人である磐音がなぜこんな裏ぶれた長屋に住んでいるのかをわからせるのに必要なエピソードなのだが、そこを見たい訳ではない。こちらは穏やかで眠っているような表情の磐音の、眼の覚めるような立ち回りを見たいのだ。理由付けはせいぜい10-15分で十分だろう。ラス前の花魁のくだりもあの半分でよい。観客がこの映画に何を求めているのか、製作者たちはそのへんを勘違いしているのではないだろうか。もちろん、超個人的な意見であることは承知している。磐音と彼を取り巻く人間模様を見たいのだという人がいても反論はしない(^^;。
 それでも「たそがれ清兵衛」「武士の一分」などの山田洋次松竹時代劇になんとなく違和感を感じていた私としては、この映画のほうが時代劇としてのおもしろさに満足できた。松坂桃李の殺陣のおまけで★1つプラスしておこう。

↓予告編
https://www.youtube.com/watch?v=jxB1HukL8mw
居眠り.jpg
☆★は、尊敬する映画評論家・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆=20点、★=5点(☆☆☆が60点で「可」。合格というか、まあ許せるラインということです)
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