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男はつらいよ50周年・おかえり寅さん [映画・文学・音楽]

 「男はつらいよ」50周年記念の第50作目なんだそうだ。寅さんの渥美清はすでに亡くなっているので、当たり前のことだが主役はできない。主役は諏訪満男こと吉岡秀隆(さくら・倍賞千恵子と博・前田吟の子ども)。私は、西田、竹中とともにこの吉岡が嫌いなので、「男はつらいよ」の比重が彼の方にかかるようになってからはこのシリーズを全く見ていない。今回見て6年前に妻を亡くし、今は一人娘ユリ(桜田ひより=「咲-Saki-阿知賀編」の主役の子と言ってもわからないか?)と暮らしていることを初めて知った。ゴクミ(後藤久美子)となんだかんだあったというような記事を読んだような記憶があるのだが、薄まっているとはいえ寅さんの血を引いているのでうまくいかなかったのだろう?

 物語はこの吉岡と、日本に帰って来ているゴクミとの話がメインで、あのときおじさんはこんなこと言ってたなぁ・・・とかつての寅さんの映像シーンが挟まれるという形をとっている。もちろん、このシリーズに大事件が起こるわけはなく、こちらは「そうそう、そんなこともこんなこともあったなあ」と再三出てくるかつて見た名シーンを思い出しながらノスタルジーに浸ることになる。嫌なことばかりでストレスの溜まる昨今、まあそれも悪くはないのだが、それだけではさすがに話がもたないので、リリイこと浅丘ルリ子も登場。さすがに浅丘ルリ子が出てくると画面がしまる。歳はとっていても昭和の大女優の貫禄十分だ。

 ちょっと調べてみたら、このシリーズで私が見たのはリリイ3度目の登場となった「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」で第25作まで。偶然、ちょうど折り返し点だったことになる。それまでの作品を全部見ているわけでもないので、多分、見ているのは20作くらいだろう。リリイ初登場の第11作まではまちがいなく見ているはずだ(ほとんど劇場で見ている)。50年ともなると第1作で結婚した博とさくらもおじいちゃん、おばあちゃん。それでも、50年作完走はご立派。御前様は亡くなった笠智衆に代わって笹野高史。ゴクミが出ていたことは知っていたが、その母親が夏木マリというのは初めて知った。つまりシリーズ後半は全然見ていないので、ゴクミが吉岡のマドンナだったことくらいしか知らないのだ。それがどういう関係だったのかに至っては全く知らない。そんな奴に「愛すべき」寅さん映画についてなんだかんだと言われたくないと言われても反論はしない。ボケ爺さんのとんちんかんな感想だくらいに思ってほしい。

 最後は、「ニュー・シネマ・パラダイス」よろしく、かつてのマドンナたちとの名シーンが次々と登場するので、寅さんフアンにとっては感涙ものだろう。シリーズ前半で脱落した私は、女優は知っていても見ていないシーンがけっこうあり、さすがに泣けなかったが、それでも「そうだった、そうだった」という記憶喚起は気持ちよかった。
 というようなことで、この映画は、ある程度、寅さんシリーズを見ていないと唐突に出てくる人物等よくわからないと思う(たとえば裏工場のタコ社長の娘・美保純など)。これが初めてという人には薦められないし、採点もなし。いわば山田洋次の「忘備録」のような映画なので細かいことは言いたくないのだが、吉岡秀隆がどうしても作家に見えないことと、冒頭の桑田佳祐の歌には違和感があったことだけは書いておきたい。

 考えてみると、最初に見たのが第1作だったのが幸運だった。
 寅さんがマドンナに恋をして振られるのがシリーズの定番なのだが、第1作には加えて長年行方不明だった寅さんが柴又にふらりと帰ってくるという「事件」があり、さらに妹さくらの結婚という「見せ場」があり、最後にはその後定番となる寅さん勘違い大失恋があるのだ。つまり、他の作品と比べて第1作は2倍も3倍も密度が濃いのだ。「七人の侍」のリーダー役だった志村喬(博の父親)の名演技もあり、私は笑ってほろりとして満足してちょっと幸せな気分になって劇場を出てきた。このシリーズを全然見ていないという人がいるとしたら、この第1作だけは大いにお薦めしたい。
おかえり.jpg
↓予告編
https://www.youtube.com/watch?v=-dL5OHWsW8w
↓第1作・予告編
https://www.youtube.com/watch?v=KqSw6_wuv3E
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