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超大作に挑戦「アラビアのロレンス」 [映画・文学・音楽]

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 昨日は日曜日ということもあって、買い物に出るとやはりそれなりの人出でした。ただ、半分は気分転換と散歩の人のようで、との店も閑散としていました。外から見ただけですが、駅のマクドナルド店は店内で食べている人は、わずか1人。行き帰りのバスも、うちの家族以外に乗っている人は、1人か2人。裸の王様・安倍と無能な太鼓持ち取り巻きのせいで、いよいよ日本沈没ですかねー[がく~(落胆した顔)]

 先日、ウイリアム・ワイラーの傑作西部劇「大いなる西部」については書いた。ワイラーの代表作とも言える「ベン・ハー」については、すでに書いている。
https://animalvoice.blog.ss-blog.jp/2019-11-17
 となると、(私が考える)ワイラーと並ぶ大監督デビッド・リーンの話もしたくなる。リーンには、「アラビアのロレンス」「戦場にかける橋」「ライアンの娘」といった超大作から、「オリバー・ツイスト」「逢い引き」など白黒映画まで数多くの傑作・佳作がある。が、やはり代表作は「アラビアのロレンス」だろう。
 安倍、麻生、小池という「三バカ大将」のおかげで暇が有り余るほどできたので(歓迎しているわけでも喜んでいるわけでもない。誤解なきよう)、この超大作を久しぶりに序曲からエンドタイトルまで通しで見てみた。もちろん、70mm大画面で見る迫力はないが、それでも映像の美しさや展開のうまさなど、改めて映画史に残る名作であることが確認できた。20年ほど前に書いた「アラビアのロレンス」についての感想に加筆する形で書き留めておこうと思う。要するに「忘備録」である。
※当時の超大作の上映時間を書き留めておく(序曲・序曲、間奏曲、終曲含む)。上映時期やディレクターズカット版等により若干の違いがある。そのあたりは適当である。(^^; 「アラビアのロレンス」3時間47分、「ベン・ハー」3時間42分、「十戒」3時間40分、「ライアンの娘」3時間15分、「クレオパトラ」3時間14分、「ローマ帝国の滅亡」3時間14分、「スパルタカス」3時間6分、「エル・シド」3時間4分。ちなみに「風と共に去りぬ」3時間42分。私が見た最も長い映画は「旅芸人の記録」で4時間くらいあった。地味な映画で、このまま永遠に終わらないのではと思った記憶がある。
ロレンス1.jpg
 この映画を見たのは、半世紀以上も前。高校生のときだ。
 「アラビアのロレンス」という素晴らしい映画があり海外で評判になっているという記事が、本屋で立ち読みしていた(^^;「映画の友」や「スクリーン」という雑誌に載っていた。「戦場にかける橋」のデビッド・リーン監督の70mm超大作で、芸術優先の「キネマ旬報」での評判も悪くない。それでなくても当時「70mm映画は全部見るぞ!」と考えていたスペクタクル映画大好き人間の私としては、一刻も早く見たいのだが、封切りは半年も先。そこで、すでに発売されていたサウンドトラック盤のステレオLP1800円なりを買い、毎日のように聞いていた。かなりの大音量で聞いていたので、漏れてくる音が父にも聞こえていたのだろう。家族でどこかへ行くなどということはめったにしなかった父が珍しく「みんなで見に行こう」と言い出して家族4人での映画鑑賞が実現した。

 劇場は、「ベン・ハー」や後に「サウンド・オブ・ミュージック」なども上映された名古屋随一の70mmロードショー館・テアトル名古屋(後にシネラマ名古屋)。「全席指定席」というのが、まず「大作」というイメージをかきたてて上映前からワクワクさせるものがあった。それだけではない。このロードショーではその後の2番館やリバイバル上映では見られないある素晴らしい仕掛けが用意されていたのである。
 というのも、この映画は画面が出る前にあまりにも有名な序曲が5分ほどのあるのだが、序曲が始まると同時にスクリーンに「第一次世界大戦の頃・・・」という当時(第一次大戦時)の中東情勢を解説する白い文字が青いカクテルライトにくっきりと浮かび上がったのである。トーマス・エドワード・ロレンスといっても日本では全くといっていいほど知られておらず、ほとんど何の前知識もなく、ただ大作で出来もいい、という評判だけで見に来た人間にとって、これは実にありがたいものだった。それにただ序曲を流しているだけよりも、第一雰囲気がある。こういうことをサービスと言うのである。
 ちなみに二番館のオーモン劇場では暗くなって序曲が流れ出すと当たり前のことだが映像が出ないので観客が騒ぎ出し、仕方なく明るいままで序曲を流し、序曲が終わるとともに場内が暗くなって映画がメイン・タイトルのシーンから始められた。モーリス・ジャールの映画史に残る音楽の素晴らしさについては、改めては書かない。LPレコードの解説には「序曲」について「ミクロス・ローザの『ベン・ハー』『エル・シド』の序曲と並ぶ」と書かれていたとだけ書いておく。

 砂漠の美しい景色から始まるのかと思ったら、いきなり主人公(ピーター・オトゥール)が死んでしまうのにも驚いた(俳優が死なないまでも重傷を負うと撮影の支障になるので、スタントなしのこの危険なシーンは最後に撮影されたという話がある(^^;)。が、よく考えてみると何度もオートバイの手入れをしていることでロレンスの神経質な側面を知らせ、オートバイのスピードを調子に乗ってぐんぐん上げ、事故で死んでしまうというのは、オレンスとして慕われ、砂漠の英雄と持ち上げられ、失意のうちに帰国するというロレンスのアラビアでの行動をあらかじめ提示していると言えないこともない。さらに葬式のシーンでロレンスに対する評価は様々で、そういう複雑な部分もある人間だったのだ、とわかる。うまいシナリオである。
 トルコ軍の飛行機による襲撃にあったファイサル王子(アレック・ギネス)が、がっくりとうなだれ、悄然として顔を上げると煙が晴れてそこにまるで救世主のようにロレンスがいる、というシーンなども画面展開がうまいので特に印象に残る。ロレンスが白い服を着て自己陶酔のように走っているところに突然アウダ・アブタイ(アンソニー・クイン)が現れる場面なども映画の教科書に載せたいほどうまい。

 とにかくこの「アラビアのロレンス」という映画は、構成の確かさ(とくに前半のテンポがよい)、映像の美しさ、音楽のよさ、俳優たちの名演(この時新人だった主役のピーター・オトゥールはじめ、アレック・ギネス、アンソニー・クインら実にそれらしい人間がそれらしい役をやっている)、ネフド砂漠越えの緊張感、アウダの陣地から出陣など、そのスケールの大きさからいっても、間違いなく映画史に残る映画である。
 誉めだしたら切りがないが、とくに印象に残るシーンを挙げるとしたら、やはりアカバの町を攻撃するシーンだろうか。アカバの町へ侵入して行くロレンスたちからカメラがずーっと移動してくると海に向けられた大砲が写り(観客は、アカバの大砲が海に向けられており、砂漠にの方には向けられないことを、すでに知っている)その向こうに青い海が見える場面は、茶色い砂漠のシーンが続いた後だけに思わずはっと身を乗り出させるくらいに美しい。しかも、大砲の右下(大画面の右下)には、トルコ軍の油断を象徴するように洗濯物がはためいている。海と大砲にばかりに目がいっていた私は、レーザーディスクで何回目かの鑑賞のときこの洗濯物に気づき、監督というものはこんな細かいところにまで神経を使っているんだと驚愕した。
 「ロレンス」のこのシーンや「ライアンの娘」のパラソル落下シーンや森でのメイクラブのシーンなどデビッド・リーンは本当に凄い。印象に残るシーンというとヒッチコックやキューブリックの映画がよく引き合いに出されるが、全然負けていない。脱帽するのみである。
ロレンス3.jpg
 そのほかのシーンについても書き出したら切りがないが、少しだけ書いておく。
 冒頭のオートバイシーン、砂漠を横断するシーンなどロレンスの移動は基本的に左から右。それが失意のうちに帰国するときには右から左への移動となる。このあたりも芸が細かい。ただ漠然と撮っているわけではないのだ。オートバイといえば、ラスト前に無言のままロレンスが乗っている車を追い越して行くオートバイにも何かの意味付けがあるはずだ(私にはもう一つうまく解析できないのだが)。
 アカバ占領後、カイロに帰る途中、砂丘の向こうに突然船の煙突が現れる(スエズ運河なのだ!)ところも、砂漠だと思っているところにいきなり船が現れるわけで、凄い!の一言。
 ロレンスの精神分析、とくにホモセクシャルを問題にする評論もあるようだが、これだけ多くの人物が錯綜する映画で、女性が出てくるのはアウダのテントでちらりと女性たちの顔が写る程度である(台詞はない)のも関係があるのだろうか。
 また、これだけの映画がアカデミー賞7つしか受賞していないというのも不思議である。ピーター・オトゥールの主演男優賞(受賞は「アラバマ物語」のグレゴリー・ペック)、オマー・シャリフの助演男優賞(受賞は「渇いた太陽」のエド・ベグリー)、ロバート・ボルトの脚色賞(受賞は「アラバマ物語」のホートン・フート)は受賞して当然だと思うのだが。かつて、「ベン・ハー」の助演男優賞受賞が敵役メッサラのスティーブン・ボイド(ノミネートすらされていない(@_@;))ではなく、どうでもいいようなアラビアの隊商ヒュー・グリフィスだったことがあるように、アカデミー賞ではときどき意味不明の受賞・落選がある。
ロレンス2.jpg
 いずれにしても、3時間を超える長編であるが、何度でも見たい名画である。
 そんな人はまさかいないと思うが、この映画を見ていないで映画フアンだという人がいたら、その人は間違いなく嘘つきである。そういう人とは付き合わないほうがいいし、付き合いたくない。少なくとも私は、そんな人と映画の話はしたくない。ピーター・オトゥールは、この後リチャード・バートンと共演した「枢機卿」やオードリー・ヘプバーンと共演した「おしゃれ泥棒」「なにかいいことないか子猫ちゃん」「チップス先生さようなら」「将軍たちの夜」「ロード・ジム」、そして「ラスト・エンペラー」の先生役などに出たが、遂にロレンスのイメージを突き崩すことはできなかった。それほどのハマリ役だったと言える(実際のロレンスは、160cm台の小男だったそうで、ペンギンブックスに出ている写真を見ると当然のようにオトゥールほどかっこよくない)。だからといってダメな役者と決め付ける気はない。生涯でこれほどの名作に主演でき、それを立派にこなしたことをむしろ祝福したいと思う。

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JUNKO 壮大な映画ですね。私も映画三昧の生活しています。
>アカバ攻撃のシーンで、大砲の下に洗濯物を「発見」したときは、監督というものはこんなところにまで目配りしているものなんだと、驚愕でした。
wildboar 「アラビアのロレンス」も、一緒に観たんじゃなかったかなあ。
>浄心ハイツだったかの三番館だったと思います。wildさんの要望で、「風と共に去りぬ」とか、「シェルブールの雨傘」「別れ道」の2本立てとか、勉強もせずにけっこう見に行ってますねえ。パスカル・プティの裸につられてわざわざ大須のほうまで「妖姫クレオパトラ」を見に行ったときは、シーザーへの貢ぎ物として絨毯がくるくると広げられ漸く裸が登場したとたんにスクリーンの幕が閉じてきました。(^^;
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