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追悼 : ダニエル・キイス [映画・文学・音楽]

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 作家のダニエル・キイスさんが亡くなりました。
http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000e060179000c.html
 多重人格をあつかった「24人のビリー・ミリガン」などもありますが、何と言っても代表作は「アルジャーノンに花束を」でしょう。その「アルジャーノン」には短編と長編とがあり、先に書かれたのは短編で、人間関係などふくらませたのが長編。長編も読んで納得の佳作ですが、短編はSF短編史上ベスト3にまちがいなく入る傑作です。
 私は、この傑作短編を高校生のとき、SFマガジンの一周年記念号で読みました。残念ながらリアルタイムではなく、何年か後にバックナンバーを注文してそれを読んだのです(SFマガジンに在庫のあるバックナンバーリストが載っていました)。
 といっても、わざわざバックナンバーを取り寄せたは「アルジャーノン」目当てではなく、ハインラインの「宇宙の戦士」(映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の原作)を読むためのものでした。3回連載なので1周年記念号の2月号から3月号、4月号と3冊注文しました。届いて最初に読んだのは、もちろん「宇宙の戦士」です。しかし、この連載は実は詐欺のようなもので、なんじゃこりゃあと言いたくなるような1部訳・抄訳だったのです(後に完訳の文庫を読んだが傑作と言えるほどのものでもなかった。あのときどうしてそんなに読みたかったのだろう。謎だ)。
 本来なら発行元の早川書房に抗議電話の一つも入れたいところですが、そうしなかったのはひとえに一周年記念号に載っていた「アルジャーノンに花束を」のおかげです。
 いやあ、感動しましたねえ。
 話は、発達障害のチャーリイ・ゴードンがある手術によって天才になるのですが、やがて・・・、というある意味よくあるお話。アルジャーノンとはチャーリイに先だって同じ手術を受けた実験用のマウス(ハツカネズミ)の名前。話はチャーリイの日記(報告書)の形で進むのですが、稲葉由紀さんの名訳もあってラスト近くでは思わず目頭が熱くなりました。授業中、先生に隠れて読んでいたのでこれには本当に困りました。よい子は、くれぐれも真似しないように。
 あれから半世紀(←きみまろかっ!)。
 こういう名作は読んで感動すればいいので、分析は野暮だと知りつつ1点だけ分析しておくと、この作品の成功の何割かは、天才が天才らしく描けているところにあると思います。天才をそれらしく描くのはとてつもなく難しく、ドストエフスキーあたりの天才をもってこないと読者を納得させる天才を造型できないのですが、それをキイスはある程度成し遂げたんですから、たいしたものです。ですから、その後の展開での「落差」が大きく、読者をより感動させたのでしょう(ネタバレしないように書いています)。
 ダニエル・キイスは決して多作な作家ではありませんし、極論すれば「アルジャーノンに花束を」1作だけの作家と言っていいかもしれません。しかし、これだけの名作が書けたのですから、「以て瞑すべし」とあえて書いておきましょう。
 「ヒューゴー賞傑作選」というヒューゴー賞受賞の短編アンソロジーを組んだ、自身著名なSF作家でもあるアイザック・アシモフは各短編ごとに紹介と感想を書いていますが、「アルジャーノンに花束を」のところではこんなエピソードを披露しています。授賞式のときあの「自信家」のアシモフが、殊勝にもキイスにこう尋ねたのです。
「どうしてこんな傑作が書けたんですか?」
 以上、「けいかほーこく」と合掌。

 「現在迷走中」に「典型的B級映画『メガシャークVSジャイアントオクトパス』」アップしました。ま、アサイラム社の映画ですから細かいことを言ってはいけません。
http://tcn-catv.easymyweb.jp/member/tag1948/default.asp?c_id=20517
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