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西部劇3本目「大いなる西部」 [映画・文学・音楽]

 いやあ、昨日は風が強かったですねえ。
 午前中ちょっと買い物に出かけたのですが、スーパーはそれなりの人出でした。どこかのえらいおっさんのようにソファに腰掛け、やることもやらずにのんびりとコーヒーを飲んでたら、飢え死にしちゃいますから(^^;。「上」から言われたから従うとか、反発してどんどん外出してやるというようなことではなく、必要なときには安倍ちゃまが「ダメだ!」と言っても外出しますよ!

 無能無策有毒の安倍ちゃまのおかげで、このところ途絶えていた、家庭での映画鑑賞が進んでいます。ありがたや、ありがたや。すべて安倍ちゃま、麻生くん、小池おばさまらド「えらい」人たちのおかげです。結果、コロナ感染は留まるところを知らずといったド「えらい」ことになっています。なんまだぶ、なんまだぶ。
【お勉強タイム】上の「えらい」を名古屋語に翻訳すると原級・比較級・最上級の順に「えりゃあ」「どえりゃあ」「どえらけねゃあ」となります。

 いずれにしても、具体的に誰かと会って直に打ち合わせをしたりすることは、相手のことを考えてできるだけ控えるようにはしているので、ともかく暇。未整理の写真が何千枚もあるのでぼちぼちと整理を始めていますが、2時間もやると飽きてきます。ついでなのでフィルムのままの写真もこの際なのでスキャナして一気にデジタル化しようとは考えているのですが、今の(デジタル化されている写真の)整理がいつまでかかるのか・・・。どうも単純作業は苦手です。では、複雑な作業に向いているのかというと、これがまたそうでもないようで・・・(^^;

 せっかくえらい人たちがつくってくれた「暇」なので、久しぶりに西部劇をまとめて見てみようと考え、「シェーン」「駅馬車」と見て、本日はその第3弾。ウイリアム・ワイラー監督の「大いなる西部 The Big Country」の登場。以前に書いた雑文に加筆したものをアップします。
大いなる西部.jpg
 この名作は、劇場(リバイバル上映)とNHK、WOWOWで見ている。wowowでのものは、以前にNHK-BS2で放送されたものと比べて色がかなり鮮やかになり、もう半世紀近くも前に名古屋の70mmロードショー館「テアトル名古屋」で見たイメージに近くなっている。NHKのようなモノクロに茶色のフィルターをかけたようなセピア調の映像では、巻頭の広大な荒野の枯れ草の色もむせかえるような「匂い(要するに西部の匂い)」も伝わってこない。さすが有料放送。あれっ、考えてみたらNHKだって有料放送じゃん(^^;。

 ちなみにこの映画、1958年の製作で、ワイラーにとっては「ベン・ハー」の前作ということになる。私がテアトル名古屋で見たのはリバイバル上映で、知り合いのSYさんから「いい映画だぞ」とさんざん聞かされていたのだが、ビデオもDVDもない時代なので、悔しいが再上映されるのを待つしかなかった。やっとリバイバル上映が決まり、試写会があるというのではがきを出したら、弟は当選、私は落選(;_;)。仕方なくお金を払って見に行ったが、十分に満足しパンフレットも買って帰ってきた。傑作であることが確認できたので、すぐにサントラ盤のレコードを買った。当時、17cmLPというものがあり45回転ドーナッツ盤と同じ大きさで33回転。その17cmLP2枚組で片面に2曲、計8曲入っていて1000円だった。ステレオ録音た゜ったか゜、低音がうまく録音されていなくて音はイマイチだったが、繰り返し聞いた。

 さて、ウイリアム・ワイラー監督といえば、「ベン・ハー」(超大作史劇)、「ローマの休日」(ロマンチック・コメディ)、「必死の逃亡者」(傑作サスペンス)、「コレクター」(シチュエーションドラマ)「ファニーガール」(ミュージカル)などあらゆるジャンルの映画を撮り、しかもクズがないという正真正銘の大監督である。
 「大いなる西部」は、その巨匠ウイリアム・ワイラーの西部劇で、冒頭広大な荒野を走って来る馬車のシーンから、これほど西部の広さを実感させてくれる映画は他にない。とくにストーリーは書かないので、関心のある人はぜひ見てほしい。2時間40分の長丁場を退屈することなく楽しめるはずである。あと、これは西部劇ではなく西部を舞台にした歴史劇だろうと言った知り合いがいたので一言書いておこう(黒澤映画でいえば「用心棒」と「赤ひげ」のちがいと同じ)。

 「大いなる西部」は、ガンファイトもある紛れもない西部劇である。何より、この映画には私が西部劇には必須と考えるダンディズムがある。一例を示そう。ラストちょい前。相手が待ち伏せしているとわかっている峡谷へ止めるのを振り切って頑固な大佐が1人向かおうとする。すると、大佐に反対していたチャールトン・ヘストンは、仕方がないとその後を追い、黙って轡を並べるのだ。もちろん、言葉などは交わさない。これがダンディズムであり、西部劇の呼吸というものである。その後を追うように何人かが馬を走らせて来て続く。音楽が高鳴り、さらにスクリーンの左端にその後に続く牧童たちの一群が映ったところでカットが変わるあたり、もう名人芸と言うしかない。この後のブランコキャニオンに突入して行く場面のカット割りや老人2人の対決までの見せ方など、さすがワイラーと文句のつけようがない。
 あまりに有名な、グレゴリー・ペックとヘストンが星明かりの下、延々と殴り合った末に互いを認め合うというのも西部劇の呼吸の典型といえる。殴りあいの前にヘストンが、ズバッ、ズバッと一気にズボンを履くかっこよさ。西部劇の登場人物は、正義であろうと悪であろうと、なによりもまずかっこよくなければダメなんだよね。
 そして、古い西部が終わりを告げ、新しい時代の西部が始まることを暗示するラスト。本当にワイラーという監督はうまいと思う。

 別のところにも書いたことがあるが、監督にはストーリーに秀でた者と、画像に秀でた者とがいる(ただし、どちらもダメな監督が半数以上いる)。ストーリー派の代表はビリー・ワイルダー。画像派の代表はアルフレッド・ヒッチコックやスタンリー・キューブリックあたりが代表だろう。ただ、ワイラーはストーリーにも画像にも秀でているのだ。「ベン・ハー」のラストシーンや「コレクター」の蝶の標本が震えるシーンなどの素晴らしさについては、これも別のところに書いたが、本作でも星明かりの下での殴り合いのシーンを筆頭に、記憶に残る素晴らしい場面が数多くある。こんなワイラーに匹敵する監督はデビッド・リーン(「アラビアのロレンス」「戦場にかける橋」)くらいしかいないだろう。日本で探せば、やはり黒澤明か。
↓ワイラーと代表作について書き出すと切りがない。興味のある人は、こちら。
https://meisoud.blog.ss-blog.jp/2011-08-21
https://meisoud.blog.ss-blog.jp/2011-10-14
https://meisoud.blog.ss-blog.jp/2019-08-23

 この映画に私が注文をつけるとすれば、ただ一つ。
 グレゴリー・ペックとジーン・シモンズ、要するにヒーロー、ヒロインのミスキャストだけだ。とくに、ペックがひどい。有名なペックとヘストンの延々と続く殴りあい、いくらなんでもペックのほうがやや優勢での引き分けというのは無理ありすぎだろう。ペックはもと船乗りだという紹介だが、とてもそうは見えない。ときとして西部の風習を下に見るようなキザったらしさが感じられるが、ストーリー上必要とはされていないので、ただ下手なだけなんだと思う。だいたいペックという役者、「白鯨」のエイハブ船長とか、「ナバロンの要塞」の世界的クライマーにしてチームのリーダーとか、どうも「そうは見えない」役をやりたがる傾向があるようだ。いろいろな役がやれてこそ役者なのだから、そのチャレンジ精神は大いに認めてあげたいのだが、ことごとく失敗で、作品の足を引っ張っているのだから、困ってしまう。こちらは、ペックの向上のために金を払っているわけではないのだ。「ローマの休日」の新聞記者とか、「アラバマ物語」の弁護士なら私も文句は言わない。
 「大いなる西部」では、チャールトン・ヘストンを筆頭にチャールズ・ビッグフォード(少佐)、バール・アイブス(谷の親分)など、男優陣がみな好演なので、ペックの違和感がよけい強く感じられるのである。

 あと、思いついたことをいくつか。
 ペックが去った後、丘の上にポツンと小さく見える点が次第に近づいて来るとチャック「ライフルマン」コナーズだったりするあたり、あの「アラビアのロレンス」の砂漠の地平線から蜃気楼のようにアリ(オマー・シャリフ)が近づいて来るシーンに影響を与えているのではないかと思うのだがどうだろう。
 西部の雄大さを彷彿とさせるジェローム・モロスの音楽は、フジテレビの競馬中継の中でも使われていたので、耳にした人も多いと思う。サントラ盤を買ったことはすでに書いたが、今ではDVDで全編を楽しむことができる。いい時代になった。
 忘備録を兼ねることを考えると、「ウエストサイド物語」や「北北西に進路を取れ」「スパルタカス」などのタイトルバックを担当したソウル・バスの、馬車の車輪をオーバーラップさせた素晴らしいタイトルデザインも一言記録しておきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=QKdmOpXJHR4
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リス太郎

西部劇のことはよくわかりませんが、私は「たわけ」「どたわけ」「くそたわけ」と習いました。「たわけの三段活用」というらしく、名古屋では国語の試験に出るそうです。
by リス太郎 (2020-04-15 09:36) 

アニマルボイス

「国語の試験」ではなく、エイリアン(「よそもん」「ぎゃあこくじん)判別試験ですね。
by アニマルボイス (2020-04-15 09:47) 

wildboar

西部劇には、名曲がいくつもありましたねぇ。
暇つぶしに、ご送信お待ちしています(^^♪
by wildboar (2020-04-15 10:44) 

アニマルボイス

やっぱ、西部劇のおもしろさの3割くらいはここぞというところで聞こえてくる音楽ですね。(^_-)-☆
wildさんとは「シェーン」と「荒野の決闘」の2本立てを名宝文化だったかに見に行った記憶があります。
by アニマルボイス (2020-04-15 10:48) 

wildboar

シェーンは覚えていますが、荒野の決闘は覚えがないです(~_~;)
by wildboar (2020-04-15 16:32) 

アニマルボイス

「荒野の決闘」はジョン・フォードの最高傑作と言う人もいますが(小林信彦など)、正直ちょっと退屈な映画なのでわすれてしまったんでしょう?
by アニマルボイス (2020-04-15 17:27) 

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