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ジョン・フォード「駅馬車」を見る [映画・文学・音楽]

 己の権力に酔いしれる権力者がいる。マスク2枚で世界的に有名になった安倍ちゃまは、こういうことがやってみたかったんだろうね、と思える「緊急事態宣言」。安倍ちゃまの計算通りというか、昨日の夜のテレビは安倍ちゃまの見にくい顔がやたらと映し出されて、空虚な言葉が続いた[ふらふら]
 こうなってくると疑り深い年寄りとしては、1月の中国人来日スルーパスやクルーズ船の無為無策やその後の後手後手ぶりは、「緊急事態宣言」をしてみたいがための陰謀だったのではないかと考えてしまうわけだ。
 もちろん、森友、加計、検事定年、桜でもわかるように、それを認めて謝罪するような安倍ちゃまではない。悪党は、絶対に自分の罪を認めないし、逃げ切れると考えているのだ。コロナが広がり緊急事態になってしまえば、お友達検察官のお手盛り定年延長や自殺した人の遺書が公開されて再熱した森友問題など吹っ飛んでしまうことなどももちろん織り込み済み。ったく、「浜の真砂は 尽きるとも 世に悪党の 種は尽きまじ」ですなぁ。ぷんぷん。[むかっ(怒り)]

 ま、いずれにしたも今の東京はできるだけ外出は控えたほうがいい。そんなことは、緊急事態を招いたラスボスに言われなくともわかっている。わかってはいるのだが、空中生活者は、外出できないとなると庭いじりもできないし、退屈このうえない。できることと言えば、読書か映画・ドラマを見ることくらいのものだ。というわけで、先日は「シェーン」を見たわけだが、昨日はもう一つの名作「駅馬車」を見た。もう80年も前に作られた白黒スタンダードサイズの映画だが、やはり名作はいつ見ても名作ですなぁ。[わーい(嬉しい顔)]
駅馬車.jpg
「駅馬車」と、ジョン・フォードの西部劇
 小林信彦の映画の本を読むと、ジョン・フォードの「荒野の決闘」に対する評価が異様に高い。本当にそんな凄い名作なのだろうか。私も別に駄作とは思わないし、ワイアット・アープを演じるヘンリー・フォンダにしろドク・ホリデイ役のビクター・マチュアにしろ、いい味を出している。見ている人にだけわかるように書くが、香水のシーンや教会のダンスシーンに見られるユーモアも悪くない。が、どうしてもそれほどの名作とは思えないのである。こちらの気が短いのか、あのゆったりとしたテンポに退屈を覚えてしまうのである。有名な「O.K.牧場の決闘」にしてもそれほどの迫力はなく、撃ち合う人物の位置関係がよくわからない。こと決闘シーンだけに限れば途中退屈なジョン・スタージェスの「O.K.牧場の決闘」のほうがよく出来ていると思う。何十回と見たわけではないが、映画館で2度、レーザーディスクで3回見ているので、そう本質ははずしていないはずだ。
 何が言いたいかというと、ジョン・フォードの最高傑作は「荒野の決闘」ではなく、まちがいなく「駅馬車」だろうということだ。
 ということで「駅馬車」の話をしよう。
 この映画こそジョン・フォードの代表作であると同時に、西部劇、いや映画史に残る傑作だと思う。
 しかしよく考えてみると、この映画、騎兵隊の護衛をつけて走る間にだんだん人が乗り込んでくる前半、騎兵隊と離れて単独で走る中盤とインディアンの襲撃、そしてラストの一通り話が終わってしまった後の決闘、と随分話の展開に無理があるのだが、その無理を疾走する駅馬車のスピード感とリズムで一気に見せてしまうところにジョン・フォードの凄さがあると思う。原作は昔「エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン(EQMM)」がミステリ雑誌なのに「西部小説特集」なのものをやっていて、翻訳されたものを読んだことがあるが、どうってことない短編だった。展開に多少の無理があったにせよ、これは素直に脚本(ダドリー・ニコルズとベン・ヘクト)をほめていいと思う。
 まず、前半の少し走る度に様々な過去をもつ人々が徐々に乗り込んでくるのだが、実にこれがテンポがいい。黒澤が「七人の侍」の侍集めのシーンの参考にしたという話を読んだことがあるが、確かにテンポの良さは似ているような気がしないでもない。ともかく「寂しい草原に俺を埋めてくれるな」というウエスタンを軽快にアレンジした曲にのって走る駅馬車を見ているだけで、わくわくしてくるのは演出の力だろう。リンゴ・キッドを演じるジョン・ウエインの登場は、このテンポよく走る駅馬車をライフルで止めての登場なのだから、こんなにおいしい登場の仕方はない(それまで駅馬車を囲むように進んでいた騎兵隊が、このときだけはなぜか遅れて離れているというのはご愛嬌)。
 後半のインディアンの襲撃シーンでは、撃たれたインディアンが駅馬車の下を通った後にむっくりと起き上がってから倒れるという有名なスタントシーンがある。もうダメかと思われたその時、騎兵隊が現れ、騎兵隊が画面手前から向こうへとインディアンを追って行く、向こうから手前へ駅馬車が入って来る、という構図が何といっても憎らしいくらいにうまい(ゴードン・スコットがリメイクした時にはこのシーンはなく、乗組員自身の力でインディアンを撃退してしまっている。全く、何を考えていることやら)。
 それほどの名作なのにフィルムの保存状態が悪く(同じ1939年に制作された「風と共に去りぬ」が今でもほとんど傷がなく発色もいいのとはえらい違いである)、逃げようとしたリンゴがインディアンの狼煙を見て逃げるのを思いとどまるシーンは、ビデオやTV放映で見ると空が写っているだけで何も見えないので、初めての人は「何のこっちゃ」と思ってしまうだろう。残念なことではある。
 さて、ジョン・フォードの西部劇で忘れてならないものに音楽(ウエスタン・ミュージック)の使い方のうまさがある。「駅馬車」の音楽の素晴らしさについては、すでに書いたが、テーマ曲からフォスターの「金髪のジェニー」に転調するあたりもうまいものである。「荒野の決闘」の「いとしのクレメンタイン」(なぜか日本では「雪山賛歌」として知られる)や「黄色いリボン」も印象に残るし、ジョン・ウエインとウイリアム・ホールデンが組んだたいしておもしろくもない「騎兵隊」にしても「騎兵隊マーチ」や「ジョニーが凱旋するとき」など音楽だけは私の記憶に残っている。音楽そのものももちろんだが、挿入の仕方がうまい。ジョン・フォードのすべての作品に言えることだが、「ここ!」というところで、ちゃんと音楽が聞こえるのだ。素晴らしい!(^^)/
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リス太郎

「シェーン」と「駅馬車」ですか。子どものころテレビで観た気がします。
by リス太郎 (2020-04-08 09:12) 

アニマルボイス

えー、私は劇場で見ていますが、どちらも昔の言い方をすれば「リバイバル上映」で、封切り時じゃないですからね。念のため。(^^;
by アニマルボイス (2020-04-08 09:34) 

wildboar

そうか、安倍ちゃんそこまで考えていたのか? そんなにもお利口さんとは思っていなかったなぁ(。´・ω・)?
by wildboar (2020-04-08 13:01) 

JUNKO

懐かしい名画を思い出しました。
by JUNKO (2020-04-08 16:13) 

アニマルボイス

>wildboar様
悪党は、悪知恵だけはすんごいですから。(^^;

>JUNKO様
安倍・小池様たちのおかげで久しぶりに昔の映画を見ることができます。ありがたや、ありがたや。ナンマダブ、ナンマダブ。
by アニマルボイス (2020-04-08 16:22) 

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